秋季レースが終了し、選手鳩を充分に休養させながら管理を続けている
         この時期は、来春作出する配合を決める時期でもあります。
         鳩レースにオフシーズンはなく、常にレースシーズンなので、
         種鳩も分離され、換羽も順調に進み、
         終了したものもあることと思います。
         この時期、種鳩には、春、秋のレース結果を踏まえ、ニ、三年間の作出、
         競翔データ−と対比させて成績の良いもののみを残し、徹底的に病因となり
         得る原因を除外して、より健康的な状況にして冬を迎える必要があります。
         
成績があまり好ましくない種鳩を、希望的観測によって翌年も作出に
         使用するより、自鳩舎で実際に
活躍した飛び筋の鳩を種鳩スタッフに
         加えること
をオススメします。
         活躍鳩を種鳩にストックすることには勇気を要しますが、一シーズン我慢す
         れば、翌春には、期待できる若鳩が、どんどん産声を上げ、選手スタッフの
         底上げになります。

       

         鳩レースで勝利するためには、周到な分析のもとに種鳩を採用し、
         整理された管理・訓練を経て、レースに臨めばよいのですが、
         その一つ一つが実に多くの枝葉を有し、複雑で難解なことが多いのが
         現実です。
         まとめてみれば、とにかく頑健で良い鳩を作出することが第一の条件、
         次にコンディションの調整にかかる部分が多いと思います。
         このコンディションの調整はコンディションを一度下降せしめ、
         その後に上昇させるという鳩のバイオリズムと連動させるような
         調整が必須になってくると思います。
         この調整には舎外運動での体調の上昇、下降、
         飼料の内容と量での調整、あるいは放鳩訓練による調整、
         さらには駆虫剤を含む薬品類による調整など種々の方法が挙げられます。
         それぞれによる基本的な考え方はあります。
         また、これらの一つのみを用いる場合、さらに複数をコンビで用いる
         場合等々、レーステクニックには多くの方法が考えられます。
         しかし、どの方法が自分に適しているのか?
         どの方法が体調を一番把握しやすいかについては、
         レースマン個々に個体差があり、それぞれ会得せざる得ないという
         障壁があります。
         実際にレースシーズンでない時期に、試験をしてデータ−を
         取っておいてレースに用いることが大切です。
         聞きかじりや、猿真似では決して好成績は残せないのも現実なので、
         自分なりの飛翔法を編みだすことが大切です。
      

 


                 
種鳩の選鳩について

      

       鳩レースを展開する際に、それぞれの地域によって、
       立地条件、コースの設定、風向き、その他の条件が大きく違ってきます。
       このことは、レース鳩を作出、使翔する際に、極めて大きな障害となります。
       なぜならば、それぞれの条件を満たす鳩は、それぞれの異なる形質と
       特性を有するからなのです。
       それでは、この地域特性を克服するには、いかなる方法が最善であるか??
       それは、その地域地域で、いわゆる飛び筋を形成している鳩を、
       形態面および血統面ともに徹底的に研究・分析することです。
       
例えば、山岳地帯にある鳩舎は気圧の変動を克服せねばならないだろうし、
       大羽数でスピードを競う地方では、スピード性能を強く有した鳩が
       飛び筋を形成していくと思います。
       難コースを飛翔して帰還せねばならない地域では、
       鳩は強い意志力を具備しなければ帰還することはできません。
       そのような特性(特殊性)を早く見つけることが大切です。
       そして、そのような特殊性を持った鳩が、どのような形態
       (主として骨格、筋肉、翼)を持っているかをしっかりと把握することです。

       例えば、向い風レースに遭遇する頻度の高い地域では、
       重心が前にあって、竜骨の前端が高めの鳩で、主翼が短めの鳩が適性を
       多く持っているだろうし、筋肉もパワーに溢れるややかための、
       強い瞬発力を有した鳩が有利です。
       また、風が追い風(フォロー)になる頻度が高い地方では、やや竜骨の浅い、
       薄手の鳩で、翼面積の大きな方が有利だし、疲れを知らない柔軟度の高い鳩
       が、より多くの適性を有しているはずです。

       地元の飛び筋は、すでにレースの洗礼と、厳しい気象条件を克服して形成
       されているわけであすから、その筋の導入が最良の方法であることは当然ですが、
       種々の事情によって、誰でも百パーセント導入できるとは限らないのも現実です。
       そこで、先程から述べている地域の飛び筋を研究・分析し、できるかぎり、
       それに形質の近い鳩を導入して基礎鳩とし、作出してレースに参加してみて、
       性能を検定し、淘汰改良を加えてゆくことで自鳩舎の飛び筋を見つけ出します。
       またレース鳩の作出ではそれが可能であるから魅力がつきないとも言えるのだと
       思います。

          

            頭脳について

      体型を大まかに頭に入れて、それぞれの地域に合致したものを選んだならば、
      次の課題は頭脳の選択です。
      レース鳩は優れた帰巣性を必要とすることは、誰でも理解していますが、
      外見上でこれを判断することは困難な作業である事は皆さんご存知だとおもいます。
      したがって、これは血統において判断せねばならない点が多いわけですが、
      ここで鳩における血統書の性格を考えてみましょう。

      鳩の血統書は、犬とか牛とかの動物と異なり、形態上の表現はなく、
      レースでの成績を重視したものです。
      極論すれば、鳩の血統書は、すなわち能力(頭脳)の遺伝を証明するものであるといえ
      ます。したがって、頭脳の判断のいちばん確実なものは、
      成績(先祖を含めて)をできるかぎり正確に記した血統書そのものという事になります。
      この血統書が信頼できるということを前提にして、
      さらに頭脳が遺伝的に優れたものかどうかを判断するには、眼の構造による判断が
      良いとされています。

   

            目による能力の判断

      種鳩として用いる場合、眼の虹彩の色素は濃い方がよいとされています。
      虹彩は厚く、深みがあり、粒子が粗くて同心円状に配列するものを良しとします。
      放射状に走る虹彩を持つ鳩は、スピード性に富んでいますが、帰巣性が安定しない
      場合が多いという説があります。
      アイサインが瞳孔の周囲をぐるりと取り囲んでいるものは、スピード性能に欠けるますが、
      帰巣性は良好な遺伝子を有する場合が多く、
      クチバシよりに三分の一程度、滲みたようなアイサインを持つものは、
      レース鳩として使翔するには好ましい場合が多いのですが、
      種鳩に用いた場合は、色素の淡いものが多く作出され、劣悪化傾向にあるようです。
      しかし、
      このスピード性能は捨てがたいので、同心円状に虹彩を有し、アイサインが瞳孔周囲を
      取り囲む鳩との交配によって劣悪化を防止できるようです。
      あるレースで一発優勝したが、次のレースで失踪などという鳩を理想として
      話しを進めているのではなく、安定して上位に食い込むエースピジョン鳩を理想として
      話しを進めています。

虹彩の外側のメラニン色素の量の多少も鳩の体力の
バロメーターとなります。
この量の多いものは、先天的に頑健な鳩が多く、
人間の貧血を調べるのに、
医師は眼瞼をひっくり返して調べるのと同じです。
同様に、鳩の眼環(マブチ)を上部に上げてみると、
先に述べたメラニン色素の沈着した部分より、
クチバシよりに毛細血管が多く見える部分があリます。
ここの部分の赤色の色の薄いものは貧血鳩が多く、
クチバシを開けて口腔内を見ても、赤の色が薄いことが

わかります。

このような状態にある鳩は、体内にどこか異常があり、種鳩・選手鳩ともに適しません。
血色色素量を調べたわけではないのですが経験から、
貧血傾向にある鳩だろうと考えられるし、
そのような鳩は、体温も若干低く、保温のため、
羽毛を逆立てている鳩に多く見られます。
低体温のため、羽毛につけた脂粉が乾燥しにくく、たとえ乾燥しても、
シルクタッチの感じがせず、
なんとなく黒ずんでいるように見えるのもこの種の症状を呈した鳩に多いようです。


                  体の色による分類

    

    鳩のクチバシ、羽毛の色の濃度、ツメの色などから、便宜上、鳩を分類してみます。
    このことは、好鳩を作出するための交配をする際に、重要な役割を果たしますので、
    覚えておくと大変便利です。
    南三陸連合会の(キ)系確立者、金野正家氏が考察した仮説に、遠藤芳春氏が考証を加え
    て、今日的解釈とした分類法です。
    文章にして表現する場合、若干難解かと思われるので、写真を用いてみます。 

 
白系鳩 黒系鳩

   写真左を見てください。左の鳩のクチバシはアメバシです。
   背中の腰の部分は見えにくいのですが、白い羽毛です。
   腹の方を見ると、腹の色は流れたような斑を呈し、かつ赤サビ色を含んでいます。
   ツメも白い色を有しています(アメヅメを含む)。
   このような鳩を『白系鳩』と称します。

   次に、写真右をよく観察してみてください。写真左と比較して同じ羽色、B(灰)ですが、
   ずいぶんと鳩の色の違うのがわかると思います。
   クチバシはあくまで黒く、腰の色は灰一色で白の混入はない。
   胸から腹にかけても灰一色で統一され、翼の羽毛も、
   一枚一枚が黒っぽい色で囲まれたような汚れた灰色をしています。
   さらにツメの色も黒い。このような鳩を、『黒系鳩』と称します。

   この黒系鳩と白系鳩を両極端にして、腰の色、胸腹の色、翼の羽毛の色、ツメの色などが
   複雑に混じりあった鳩を、『中間色系鳩』と総称します。
   しかし、この中間色系鳩にも羽毛の色の明度(灰色の羽毛の明度)によって
   黒系鳩に接近した中間色系鳩、白系鳩に接近した中間色系鳩、
   真に中間に位置する中間色系
と分類されます。

   それではそれぞれの色を有した鳩の特徴はというと、
   『黒系鳩』の場合、この種の鳩は、全体的にドロ灰の色素が多く、眼の色の色素も暗いものが
   多く、ヒナで生まれたばかりのものを見ると、皮膚も黒く、 成鳩になっても眼環さえ黒い
   鳩がいます。
   この種の鳩の特徴は、体力的頑健さに代表されます。いわゆる体力派です。
   したがって、病気に対する抵抗力も強く、筋肉は硬く、羽質の柔軟性にも欠けます。
   能力的にも劣り、失踪の確率が高く、筋肉が乳酸化されやすく、見た目より
   疲労の回復が遅いとされています。
   愛鳩の友誌のGCH、CH、RCH認定鳩を見ると、この黒系鳩をベースに、
   翼、頭部、クチバシ、ツメなどに白の色素(俗に刺毛)を混入した鳩が
   多く見ることができます。
   分析するに、それらの鳩は経年的に飛翔を続けた鳩が有資格なようなので、
   体力的に頑健な鳩(黒系鳩)に、刺毛を混入して、能力的に改善した鳩が、
   認定されるようなレース成績をおさめるのではないかと考えられます。

   『白系鳩』は黒系鳩と成反するものと考えればよく、体質的に弱いのが最大の難点ですが、
   切れはあります。
   管理技術に自在の妙を有する方は、究極的に白系鳩に近い中間色系鳩で
   競翔に向かうとされていますが、その場合でも体質的に劣悪化に向かうので
   交配鳩として、黒系鳩および黒に近い中間色系鳩をもたねばならないことを
   覚えておくと良いでしょう。

   『中間色系鳩』はレースの際に黒、白両系鳩の中間にあるため、もっと容易な管理で
   好成績を残すことができ、飛ばしやすいのですが、種鳩として用いる場合は、
   黒系×白系でできた鳩であるために雑種となり、一度、黒系、白系に戻した後でないと、
   好鳩作出の確率が低くなります。
   中間色系×中間色系は、なかなか好鳩が作出されないとされています。

       

                        筋肉について

   筋肉は、飛翔するうえで、重要な部分です。
   最近の走査型電子顕微鏡(マイクロスキャナー)の開発、発展によって、その研究は
   飛躍的な進展をとげました。
   NHKテレビなどにも紹介されましたが、すでに筋肉には、遅筋(赤筋)速筋(白筋)
   あることは、今日的常識とさえなっています。

   ところが、ピジョンスポーツにおいては、それぞれの鳩がいかなる筋肉構成をしているか、
   切片標本を作成して鏡検して判断するわけにはいきません。

   だからといって、手で握って判断する場合、鳩は握られたことによるストレスで筋肉を
   収縮させ、そればかりか、骨格さえも変化を生じさせるほどです。
   したがって、このような条件下で、手に触れて柔軟性を確かめる事は難しいことです。

   しかし、ベテランは鳩を握るとき、鳩にストレスをかけないよう、包み込むように、
   そして鳩を浮かすように持ち、しばらく落ち着かせ、鳩の恐怖心を除外して
   
各部の観察をしています。
   筋肉には適度な柔軟性が必要な事はもちろんですが、筋肉の付着量は、
   骨格の形状に左右される場合が多い点を覚えておくことが大切です。

   一般に、竜骨の浅いメス鳩は、竜骨の横に筋肉が、あたかも竜骨が埋まるように
   付着しやすいものだし、逆に竜骨の高いものは、竜骨周囲に大胸筋の付着量が
   すくないように思われますが、これは錯覚であることを頭に入れておいてください。
   なぜならば、竜骨の高低によって、筋肉の絶対量をはかれないからです。

   大胸筋は翼を下方に下げる、すなわち推進力を起こすものであり、
   小胸筋は翼を上方にあげる際に使用するものです。
   さらに体の中のエネルギー源であるグリコーゲンを蓄積する重要な場所であるので、
   その量は豊かであった方が好ましい事は当然です。
   しかし、重量があるものであっては、浮力がそこなわれるので、
   軽いものが望ましく、一般に黒系鳩は骨太で筋肉も重く
   白系鳩は骨が細く、筋肉も軽い鳩が多いようです。



     

                     翼について

   しばしば形状とか、大きさとかが問題とされるが、その事は、
   風によって大きく左右されるものです。
   短・中距離鳩と長距離鳩では翼の形状が異なり風の抱え方も違ってきます。
   短・中距離鳩は副翼よりも主翼が発達し、長距離鳩は浮力を利用するために、
   主翼より副翼の発達したものが多いものです。

   しかしレースが常に同一条件下で実施されるわけではありませんから、向い風、
   追い風を問わず、飛翔を続けねば帰巣できません。
   したがって、飛びにくい条件下では耐えしのぎ、自分の飛びやすい条件のときに、
   十分な能力を発揮できるものでなければなりません。
   鳩を飼育する方誰でもが、追い風、向い風のオールマイティー型を作りたいと
   希望するものですが、中間的な型の鳩を作ると、レース結果もえてして
   中間的なものになりがちです。

   羽軸の強度、柔軟さも、もちろん重要な問題の一つではあすが、鳩舎に帰るという
   意志力と、風雨に耐えて飛ぼうとする精神力に優るものはありません。
   多くのレースをこなし、かつ好成績を残したものは、多くの面で理想に近い鳩体構造を有し、
   健康でバイタリティーに溢れるものです。

          

 

                         まとめ

   種鳩の条件は、まず、地元で淘汰された飛び筋ベースに、それぞれ希望とする
   距離に見合う骨格を有した鳩を据え、なおかつ、体の色が黒系鳩と白系鳩を持つ事です。
   それらの鳩の体型的条件に優先して、信用のおける人格を有した人物が作出した、
   できるだけ多くの好成績鳩祖先に持つ血統構成の鳩を選ぶことがポイントです。
   この場合活躍鳩それ自身でなくてもむしろよい場合が多く、
   要は
鳩を買うより人を買え、ということに尽きるということだと思います。