鳩レースによって、鳩体には、飛翔するためのエネルギーを消費し、
筋肉の長時間にわたる収縮によって筋肉に乳酸が蓄積される。
いわゆる筋肉疲労と、飛翔するスピードによって発生する風圧によって鳩体の骨格そのものに,
受ける力による疲労とが惹起される。
 筋肉疲労は舎外運動によって、平素から鍛錬された鳩に軽く、舎外運動の不足な鳩に重い。 
また、体重の軽い鳩に軽微で、重い鳩に重度である。 
筋肉の疲労状態を識別するには、キール(竜骨)のところの羽毛をはだけて、大胸筋をみるとよい。
大胸筋の色がピンクのものを良しとし、暗赤色のものは疲労の程度が高い。
これらは、筋肉が燃焼を続けた結果発生した乳酸の蓄積が主となり、
さらに外圧(風圧)を長時間受けるために起こる内出血(毛細管)が副となる。
 もう一つの判断は皮膚の疲労の判断である。
これは『疲れ』という漢字を分析すると『ヤマイダレ』に『皮』と書く。
従って疲労が一番最初に表われるのが皮膚である。
餌をついばむところを観察すると背中の羽毛はピッシと密着せずに、逆立てているようなものは、
ほとんど『疲れ』の状態にあると断言できよう。人間の場合、疲れてくると肌が荒れてくるというやつである。
 この二通りの疲労判断から、疲労という結論が出たら、これを除去しなければならない。
この除去する事、即ち疲労がない状態にもっていってレース参加することが、
必勝法の最もたるものである。『鳩レースは疲労抜きゲーム』といわれる所似である。
 しからば、どのような手段を用いて疲労を抜くかという問題になるが、
これも全鳩を同一に論じる事は全く不可能なことである。
なぜならば、疲労が発生したレースがイージーだったのか、ハードだったのかの判断が必要だろうし、
鳩固体の本来のがんけんさにもよるだろう。
そこで、鳩の疲労の状態の識別は読者に委ねて、もっとも簡便は『疲労抜き』の方法を述べる。
 鳩が上空を飛翔し帰還すると、まず、エネルギーの消費のために、体温が低下する。
したがって帰還したばかりの鳩に冷水を飲ませるのはタブーである。
次に餌を与えるわけであるが、この餌は高蛋白、高脂肪のものを与える必要は全くない。
その理由は、疲労して消化・吸収力が著しく低下した鳩に、
消化吸収のメカニズムが複雑なそれらの飼料を与えると、疲労がさらに増すからである。
 マイロ、大麦、ヒエなどの炭水化物主体のエサを少量与え、空腹感だけを癒してやれば良い。
そして鳩舎の自分のポジションで夕刻まで過ごさせ、夕刻になったら、“魔法の箱”に移し、
家の中のあたたかい部屋で静かに一夜を過ごさせる。
魔法の箱などと子供だましみたいな・・・・・・といぶかる人もあろうが、
この箱は効果絶大なものがあるから不思議である。
この魔法の箱は、ミカンの空き箱のただのダンボール箱である。このダンボールの箱の底に、
切った新聞紙の細切りを厚めに敷く。その中に鳩を入れて暖かな部屋で一晩おくと、
翌日にはびっくりするほど疲労が回復するものである。
帰還した鳩に温浴させるレースマンもあるが、温浴は乾燥に手間取り、その鳩を鳩舎に戻すと、
再び冷えて風邪など罹患する危険性が高くなるし、体調も一度低下する。
種々、良いという方法を試したが、この魔法の箱が一番だと確信する。
一晩たたっら鳩舎に戻し、エサ、水を他の鳩と一緒に与えて、それでも疲労の回復が本当でなかったら、
夕刻に魔法の箱に入れて家で泊める方法を、ニ、三日繰り返せば、病気を持っていない鳩であれば、
ほとんど回復するものである。蛇足ながら、風呂とかあたたかい部屋というものは、
我々人でもなんとなく緊張感が緩み、疲れがとれるものであることを付記する。