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| 古今東西を問わず、換羽については諸悦粉々、議論百出である。 と、いうことは定型的な常識が成立しない事を意味している。 筆者も換羽については一家言を有すと自負するものであるが、 定かか(?)と問われれば自信をもってうなずく事はできない。 それほどに換羽は難しいもののようである。 |
| 栄養学的にもカルシウム、硅酸、タンパク質その他数多くのものを必要とするだけに、 欠落することのないように与える事は、確かに難しいことである。 |
| 前にも述べたことではあるが、換羽に最も影響を与えるものは疲労である。 内臓に疲労を蓄積させると、いかなる栄養素も吸収が悪くなって結果的に、 羽毛に部分的に質の悪いものが生えてしまう。 一度生えた羽毛は強制的に抜くことでもしなければ一年間はそのままである。 従って、換羽期間中は鳩の内蔵に疲労をきたさぬよう、慎重に管理して欲しい。 むろん栄養的に良質のタンパク質は必要であるが、大量のタンパク源として豆類等を過剰に与えると、 その吸収、排泄に負担がかかる余り、かえって体調を乱し、換羽どころではなくなったりする。 |
| 一般に豆類をタンパク質として食べるとすぐ吸収されるように思うが、 複雑な消化、吸収、排泄回路をたどることを理解して欲しい。 体内に吸収されたタンパク質は換羽だけに選択的に働くのではなく、体中をめぐる事もおぼえてほしい。 |
| 統計的に見ると換羽に影響を及ぼす程度を目で測るならば、 緑色の便をする状態となると換羽にマークが残るようだ。 つまり危険信号である。緑色便は病的な状態を除いて、胆汁が多く排泄するために起る現象である。 レースで餌を食べず帰舎した鳩が緑色便となるのは、消化するものなしに、 胆汁のみが排泄されるからである。エサを抜いても緑色便になるのはこのためである。 原因はともかく、緑便状態に鳩体が追いこまれると確実に換羽に影響が残る。 |
| 次に換羽のスピードであるが、これはあたかも飼料によるかのようにいわれるが、 健康、不健康を問わず遺伝情報によるものもある。 例えば特定のラインのみが換羽が早く進行したり、あるいはその逆になったりするからである。 この換羽スピードはレースにおいての性能にあまり影響は有さないようである。 秋季レースこそ、換羽に勝利したものが勝利するといわれたりするが、何もレースは秋だけではない。 メインレースは春が本番である。換羽を無理に操作して秋レースを乗り切るより、じっくりと焦らず、 無理強いのレース参加を控えて十分に成長させてレースに参加させて欲しいものである。 |
| 主翼の十枚目の脱落はレース性能面で、しばしば問題となるが、 新しい羽毛が生えかけの頃は何も十枚目でなくとも痛むものであろう。 そのうえ十枚目は、両側に支持する羽毛のある他の主翼と異なり、 未発達の状態では風圧により反り返って飛翔性能が減少する。 |
| 従って十枚目を落とすと鳩は飛翔できぬ不安から体調も落とし、食欲も萎えるものである。 こんなに不安な状態にある鳩を飼育者本人のエゴで レースに参加させなければならない理由などあるはずはない。 五百キロを飛べる鳩はそのシーズンに無理して飛ばさなくとも、次のシーズンには飛べるものである。 千キロも同様である。 千キロを飛べる能力のない鳩を秋に無理して五百キロを飛ばしておいて何になるだろうか? 罪多くして功なしである。 |
| 五百キロで能力を発揮できる鳩は、五百キロに完全な状態で参加すべきであって、 不安材料を抱えてのレースでの成功はあり得ない。 |
| 想像を絶する風圧を受けるわけであるから、換羽期間中は飼料管理を徹底し、 いかなる風圧にも抗し切れるような、芯から丈夫な羽毛を作ること、これが勝利への近道である。 “急がば廻れ”の譬えの通りである。 |
| 本稿では、若鳩のトレーニングを中心に、換羽については基本的考えを述べるにとどまった。 次項では換羽にもう一歩踏み込み併せて若鳩の訓練と仕上げについて述べてみたい。 |